留学はゴールではなく、自分のこれからの10年を再設計するための手段

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1. はじめに:誰のためでもなく「自分のための言葉」を持つ

「なぜ今、留学なのか?」という問いに、あなたは自信を持って答えられるだろうか。面接官や上司の前で語るための“きれいな言葉”ではない。誰かに納得してもらうための理由でもない。**必要なのは、自分自身が納得するための“本音の言葉”**である。

留学準備の過程は長く、ときに心が折れそうになる。そのたびに立ち返るのは、「そもそもなぜ自分はこの道を選ぼうとしたのか?」という原点だ。その言葉があるかどうかで、道半ばでの迷いや後悔は大きく変わる。合格するかどうかよりも先に、「何のために行くのか?」を自分の中でしっかりと見つめ直すことが、この旅のスタート地点である。


2. なぜ「今」なのか?という問いに向き合う

留学を考え始めた時、最初に突きつけられるのは「なぜ今?」という問いである。それは他人から投げかけられる疑問であると同時に、自分の心の中からも何度も立ち上がってくる。

社会人3~5年目という時期は、キャリアにおいても私生活においても転機を迎えやすい。職場での責任が増し、社内での立ち位置が少しずつ固まり始める一方で、「このまま同じ会社に居続けていいのだろうか」「もっと視野を広げられる場所があるのではないか」という漠然とした不安も芽生える。そんな揺らぎの中で、「留学」という選択肢が頭をよぎるのは自然なことだ。

しかし、タイミングの壁は思った以上に高い。周囲はキャリアを積み重ね、結婚や子育てなどライフイベントに進んでいる人も増えてくる。その中で、自分だけが“再スタート”を切ることに対して、後ろめたさや恐れを感じるのは当然だろう。

それでもなお、「今」というタイミングに意味を見出すことができるかどうかが重要である。留学はゴールではなく、自分のこれからの10年を再設計するための手段だ。たとえば、30代でリーダーシップを発揮したいなら、今この瞬間こそが思考と行動の切り替え点になる。35歳で転職や起業を見据えているなら、遅くとも今しかないという逆算が成り立つ。

「もっと実績を積んでから」「もう少し貯金ができてから」と思いがちだが、時間は待ってくれない。むしろ不確実性の高い時代においては、“正しい時期”など存在しない。「今だからこそ行く意味がある」と自分で定義することが、留学準備の第一歩になる。


3. 「なぜ海外か?なぜ大学院か?」を解きほぐす

留学を目指すとき、多くの人が「英語力を上げたい」「グローバルな視野を持ちたい」と口にする。だが、それだけでは不十分である。実際に出願書類や面接では、より深いレベルでの自己分析と動機の明確化が求められる。特に、**「なぜ日本の大学院ではなく、海外なのか」**という問いに対して、自分の言葉で語れることが合否を大きく分ける。

たとえば、ビジネススクール(MBA)を目指す人であれば、「多国籍チームでの経営判断を体験したい」「米国でのアントレプレナーシップ教育に触れたい」といった具体的な理由が求められる。AIやコンピューターサイエンス(CS)を専攻したい人なら、「世界最先端の研究に参加できる環境に身を置きたい」といった動機の解像度が必要になる。

また、大学院という場を「専門性の訓練機関」としてどう捉えるかも重要だ。ただ英語で学ぶことが目的ではない。リサーチやプロジェクト、ディスカッションを通じて、自分の関心を深め、問いを研ぎ澄ませる場所である。職場では得られない知的な刺激や、多様なバックグラウンドの仲間との出会いが、思考の枠を大きく広げてくれる。

結局のところ、留学とは「どこで、何を、誰と、どう学ぶか」を自分で選び取る行為である。「海外で学ぶからかっこいい」ではなく、「自分にとってこの環境がなぜ必要なのか」を一つひとつ言語化していくことが、出願成功のカギとなる。


4. 他人の期待ではなく「自分が納得する理由」の育て方

「留学、いいじゃん。すごいね」「そんな挑戦できるなんて尊敬する」――職場や友人からそう言われることもあるかもしれない。だが、それは本質ではない。他人がどう思うかではなく、自分自身が「この決断に意味がある」と納得できることが、何よりも重要である。

とくに社費留学を目指す人の中には、「会社の期待に応えたい」「選ばれた人材になりたい」という気持ちが動機になっているケースも多い。だが、その“期待”だけを支えにすると、いざ選考に落ちたり、方針変更が起きたりしたとき、心が折れてしまう。どんな結果でもぶれないためには、誰かの期待ではなく「自分の軸」が必要だ。

軸を育てるには、「キャリアの成功」という尺度から少し距離を取ることが役に立つ。どんな役職に就くか、いくら稼げるかではなく、**「どんな人生を送りたいか」「どんな問いを持ち続けたいか」**を問い直す時間をつくってみてほしい。それはスキルセットや資格の話ではなく、自分の存在価値や行動原理にかかわる問いだ。

たとえば、「学生時代に挑戦したかったけれど、経済的な事情で諦めた夢を今叶えたい」「コロナ禍で世界とのつながりを絶たれたとき、自分の視野の狭さを痛感した」「目の前の業務に忙殺されていた数年間、自分の成長を実感できなかった」——これらはすべて、他人に伝えるには少し弱く見えても、自分にとっては圧倒的な“原動力”になりうる。

本当の動機は、時に不器用で、論理的ではない。だが、自分の内側から出てきたその小さな違和感や渇望を、大切にしてほしい。それこそが、「あなたにしか書けないエッセイ」を生み出し、「あなたにしかできない学び」を支えることになる。誰かのために立派な理由を作るのではなく、あなたが生きやすくなる理由を、あなた自身で育てていくのだ。


5. 一行で言える「留学の目的」作りワーク

留学準備が進むほど、聞かれることになるのが「何をしに行くのですか?」という問いである。面接でも、エッセイでも、友人との会話でも、何度となく問われる。そのたびに迷わず、ぶれずに答えるためには、“一行で言える目的”を持っておくことが大きな助けになる。

たとえば、次のようなフォーマットで、自分の言葉を整理してみよう。

「私は〇〇の分野で〇〇のような課題に挑戦するために、海外大学院で〇〇を学びたい」

これは単なる自己紹介ではない。あなたの人生観・課題意識・行動方針の凝縮である。この一文を作るためには、自分がどんなテーマに関心があり、どんな変化を起こしたくて、なぜ海外の大学院がそれに必要なのか、を何度も考え直す必要がある。

そして、この一文は書くだけでなく、“声に出して”語ることで、より深く自分の中に根づいていく。他人に伝える前に、自分の耳で聞いてみるのだ。「あ、自分は本当にこう思っているな」と実感できたとき、あなたの言葉は、単なる受験対策を超えて、人生の指針へと変わっていく。


6. おわりに:その言葉は、これからの「羅針盤」になる

迷ったとき、疲れたとき、心が折れそうなとき——立ち返る場所がある人は強い。あなた自身の言葉で語れる「なぜ今、留学か?」という問いへの答えは、これからのあらゆる選択を導く“羅針盤”になる。その言葉を、焦らず、丁寧に育てていこう。

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